ウサギの診療講座 兔の歯について

01年.11月号NJK(ペットメデカル社)寄稿   

 兔は2生歯性の動物です。乳臼歯は生後30日前後で消出しますので、離乳のおわるころにはなくなります。動物病院で診るときは永久歯に生え替わってから来院するケースが殆どです。一般的に動物病院に訪れるウサギ目ウサギ科の永久歯の歯式は2033/1032の計28本から成り立っています。 28本の歯はすべて常生歯という犬猫にない形態をとります。常生歯とは絶えず伸びること、解剖学的に無根という2つの特徴をもった歯をさします。

兔の切歯。切歯の後部が黒くなっているのが根尖がひらいて、歯が正常な証拠。この黒いところが象牙質などをつくり歯が伸びている。常生歯といはれるゆえんである。。切歯の後部が白くなっている場合は、この歯は機能してないことを示す。切歯は鼻側にエナメル質。唇側にセメント質で覆われる。歯根膜はセメント質のみに存在する。

 兔の犬猫との最大の違いはその咀嚼運動にあります。兔は本来、木の皮や草を主食としてきました。高繊維で低蛋白な食事です。歯式をみて頂ければわかるように、犬歯がなく、そのため餌を食べる時、兔は下顎を亜脱臼させて切歯で餌をつかみ、上下運動で口腔内に餌をもってゆきます。口腔内へもってゆかれた餌は臼歯の測方運動でちぎられ胃におくられます。ともかく高繊維な食事をしますのでよく噛みます。そのため兔の歯は歯が摩耗を生じます。餌が入ると歯がいつも摩耗しなければならない食性ですので、犬猫のように、伸びない歯では食性に対応できないのです。そのため常生歯という歯が一生のびる形態をとっているのです。兔は生きてゆく手段として、どうしても常生歯が必要なわけです。歯が過長と摩耗を繰り返す。これが木の葉や草を主食としてきた兔の咀嚼運動です。  

動物病院に来院する兔はどのような食事をしているでしょか。 現在はペレット中心の餌が主流になっています。確かにペレットの普及に伴い、栄養性の疾患はここ10年近く少なくなっています。しかしペレット中心の餌の短所として、切歯の上下運動のみで餌が破壊してしまい、臼歯を摩耗させることに大切な測方運動がなくなることがあげられます。そのため臼歯はどんどん奥に入り込み、下顎の膿瘍、難治性結膜炎の原因になります。

 

ペットショップで購入直後の兔。約5ヶ月齢。
5歳 下顎臼歯が下に入り込み下顎骨をつきゆけようとしている。また臼歯同士の咬面は正しくあっていない。。上顎の臼歯も眼球を圧迫している。両方を比較すると違いがわかるとおもいます。 また臼歯は不正咬合をおこし、舌炎になり食欲不振の原因となります。(図3、図4参照)とくにハードの餌をたべているとこのような傾向になりやすくなります。   
 正面方向像 左下顎1歯臼歯が内側に伸びている。内側への過長は小さい場合レントゲンではわかりずらいことが多い。左下顎2歯臼歯は上顎にふれている。

 対策として犬猫は歯石用フード、歯科用ガムをあたえますが、兔は上記したように、咀嚼が全く違うためそのような製品では予防できません。飼兔は頭部レントゲンを撮ると歯のどこかしらに異常がみられるのが現状です。兔の歯の手入れには、ペレットにくわえ、測方運動をさかんにする牧草、ワラを沢山あげることが重要です。とくにペットショップで購入直後の若い兔には良質で繊維質豊富なラビットフードと牧草を沢山あたえるよう指導してください。

 兔は餌には強情な動物で7割位の割合で、1歳時にたべた餌を一生食べつつける傾向があります。途中から餌を変えたり、牧草を加えられない場合がよくあります。1歳時の兔には牧草もふくめて、よい製品を多くあたえておくことが大切です。また兔のケーキ、ビスケット類は原料に砂糖が使用されており、兔の食事には適してません。兔のケーキ、、ビスケット類に使用により、腐歯の報告もある位です。  

 診断は@稟告、A頭部レントゲン(右下、左下、頭背像、正面方向の計4方向)B犬猫用耳鏡による口腔内検査で行います。年齢は1年位からおきます。食欲不振、食べたそうだへど食べれない、柔らかいものしか食べない、流延、歯ぎしりといった稟告で来院します。しかしこのような症状は他に疾患でも呈することがあります。体温、心拍数、呼吸数の測定後、まず触診、腹部レンドゲン、また必要に応じて血液検査を行い毛球症はじめ胃腸疾患、代謝疾患をルールアウトします。兔に太い注射器で兔用強制給餌食をあたえると、臼歯不正咬合の場合は臼歯を通過すれば悪いところはないので比較的簡単に強制給餌ができます。しかし毛球症など他の疾患時は強制給餌に手こずることがよくあります。私の経験的な方法ですが鑑別診断には役立つとおもいます。次に犬猫用耳鏡による口腔内検査で行い多量の涎が存在したら、どこか不正咬合がある証拠です。

 次に頭部レントゲンでどのような不正咬合をおこしているか検討しています。しかし小さな不正咬合はレントゲンではわからない点もあるので、麻酔可能ならイソフレン麻酔下にて兎用開口器を使用して、口腔内検査を行う場合もあります。

一般的には下顎の臼歯が内側に伸びて舌炎を、上顎の臼歯が外側に伸びて頬に炎症をおこすことがよくみられますが臼歯の不正咬合にはさまざまなパターンがあります。  

切歯(前歯)の処置について。

切歯(前歯)の過長は大工道具で切除すると根尖を痛めてしまい、化膿の原因にもなりかえない。表示のようなマイクロモーターの使用が望ましい。

 

odagawa animal hospital 

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