獣医繁殖学講演


講師 日本獣医畜産大学 獣医繁殖学教室 河上栄一先生 筒井俊彦先生 


1・犬の外陰部からの持続出血   河上 栄一先生 平成11年3月11日 

1.卵胞膿腫 2.排卵障害 3.卵巣腫瘍 4.子宮疾患

 出血始まって、平均8日で発情期(10日位、雄をマウントしてもいやがやない)に入る。発情期にはって2日で排卵する。排卵後1-2日が交配適期。長い犬で30日間位 血が出ていても正常なことあり。年をとっても妊娠は可能。受胎率は下がる。排卵数も減る。 犬は2ヶ月位妊娠していても、していなくてもプロジェステロンの濃度はかわらない。 よって乳房がはれたり、乳がでるのは正常。犬は子宮回復が遅い動物。


1.卵胞膿腫

 卵胞は正常では5ミリ以内。河上先生のお話では卵胞1センチを越えるようでは卵胞膿腫。犬種に関係なく。卵胞膿腫には発情型と無発情型がある。

発情型・スメア角化細胞。外陰部出血。脱毛。貧血。顆粒膜細胞(エストロジュン分泌) 犬に多い。エストラジオール17β(E2)の値、20>とでる。犬は人の1/10程度しかないのて測定の意味はあまりない。人は100位 。

非発情型・出血なし。腹部膨満。夾膜細胞(卵胞膜)細胞(プロジェステロン分泌) 牛に多い。発情ない。 備考・プロジェステロンとテストステロンは測定可能。(人の検査センター)


2.排卵障害 

 5ミリ位の卵胞が2週間つずくとこれは排卵障害。 |卵胞膿腫 }排卵障害の原因。LHの分泌不足。LHサージがおきて排卵が起ききるが、LHレベルが低いため起きない。FSHはあがる。よって卵胞は発育する。老化、ストレスによりおこる。

治療

@Gn-RH製剤

 コンセラール(武田) 100-200μg/h、im,iv 2週間間隔、3回投与。アミノ酸系のホルモン剤。よって抗体はできにくい。 あまり効かない。

AhCG製剤

 プベローゲン(三共),ゴナドトロピン(帝国)500-1000μg/h、im、iv 2週間間隔、3回投与。 LHの排卵促進作用。またアポトーシス(排卵せず黄体化していく)を期待。糖蛋白。分子量 大きい。抗体作りやすい。                                        

B合成黄体ホルモン

 デルボステロン(共立)、コビナン(三共)20-30mg/kg、im、sc 2週間間隔 下垂体機能を抑さえる。FSH機能を抑える。よって卵胞機能をおさえる。フードバック機構をつかう。エストロジュンを抑える。皮膚、毛薄くなることあり。ホルモン療法の中では一番効果 ある。 治療を開始して2週間位でよくなる。3-4ヶ月で発情始まる。脱毛よくなる。 発情出血は子宮角全体から出る。小血管ははれつしている。


3.卵巣腫瘍 顆粒膜細胞腫

 卵巣表面はごつごつしている。高エストロジェンになる。良性であることが多いが、高エストロジェンのため貧血になる。雄でいうセルトリー細胞腫。 夾膜細胞腫(卵胞膜)・結合組織性の細胞。高プロジェステロンになる。腹部腫大。発情なし。出血なし。 未分化細胞腫・表面ゴツゴツ。割面もきたない。悪性。リンパ行性に転移。肺、腸管膜リンパ節に転移する。雄でいうセミノーマ(精上皮腫)。


4.子宮疾患 子宮蓄膿症                                   

 5歳以上の未経産の雌。原因菌E.coliが8割。肛門、直腸のよごれが関係している。E.coliはエンドトキシンを発生させる。腎臓が障害を受ける。水分の再吸収機能が失なはれ、多尿に、そして多飲になる。 犬の96%は黄体あり。細菌の増殖がふえる。猫は交尾しないと黄体ができないので少ない。 排卵後、数週間から2ヶ月後に起きる。オーナー発情がわからないこともあるので、乳腺のはれなど良く観察すること。 E.coliのため。チョコレート色。悪臭。粘膜の出血性炎症のため、外陰部がはれる。ほかの菌のときは乳白色の場合もある。パイオの初期を発情と間違うことがあるので、必ずスメアをとること。パイオなら白血球がある。

 PGF2αにより治療。

PGF2αの作用

1.黄体退行作用。 2.子宮頚管拡張作用。 3.子宮収宿作用。


犬・PGF2αーA エストラメイト(住友、牛用)      成分名  クロプロテレノール         

         シクロセプト(大日本、大動物用)    成分名  フェーンプロスタレン

猫・PGF2α   プロナルゴン(アップジョン)      成分名  ジノプロスト

犬はPGF2αは牛の倍必要。ききずらい。そのためPGF2αーAを使用する。 猫はPGF2αーAはききずらい。そのためPGF2αを使用する。


投与量 犬

・エストラメイトの投与量 100-200μg/h、im   プアーな動物 200μg/hを3分割して,sid、eodで投与してもよい。  

・シクロセプトの投与量 50μg/h、im   プアーな動物 50μg/hを3分割して,sid、eodで投与してもよい。

注意

2日以上あけると効果なくなる。 子宮水腫、子宮粘液腫 カタール性子宮内膜炎。非感染性子宮内膜炎。無症状がつずく。黄体なくても発症する。

副作用

平滑筋収縮。嘔吐、下痢、心悸亢進、末梢の血管収縮のため血圧上昇。起立不能 心臓の悪い動物、全身状態の悪い動物には向かない。

副作用防止

副交感神経遮断薬 パドリン(藤沢、人用) 成分名ブリフィニウム 7.5mg/kg またはアトロピンの通常量でもよい。

 

質問 擬妊娠時の乳汁分泌抑制 はどうすれば

 テストステロン 5μg/kg、im 2週間後状態におうじて 。視床下部にフィードバックをかけてプロラクチンの分泌を抑える。雌には影響のないホルモン剤を使用。 古い本にはオババンの使用がしるされている。プロラクチンは抑えるが、乳腺は発達させる。


雄犬における潜在精巣について  河上 栄一先生  平成11年5月13日

 妊娠40日では雄雌の区別はつかない。これから性分化が始まる。腎の下に生殖腺がある。 妊娠後40日ごろ性分化が始まるため、この時期のprogesteronの投与により、雄は半陰陽や潜在精巣になりなすい。 牛は妊娠280日にたいして、妊娠後30日で陰嚢内に移動するが犬は生まれて30日で、陰嚢内に移動する動物である。(猫は3週間)犬は精巣下降が遅い動物。 この時期テストステロンの濃度はかわらないが、デバイドロテストステロンの濃度は上昇する。このホルモンの上昇により精巣下降はおきる。


潜在精巣の起こる原因

1精巣導体の発達
2鞘状突起の発達(総しょう膜)
3前生殖靱帯の伸長(血管など)
4鼠径管
5腹圧 温度 

 

正常精巣36 35  32   2.5:1=鼠径:腹腔 ・片:両=9:1 ・右:左=9:1・
多い犬種   コリー、シェパード、マルチ、ポメ 1.7% ビーグル(1.5%)
陰嚢内に精巣があるとき、腫瘍の発生率1%  潜在精巣時は7ー10%の発生がある。

腫瘍 セミノーマ(精上皮腫) 

正常に近い形をたもって大きくなる。細胞は円形。


セルトリー細胞腫 

estrogen上昇する。そのため片側睾丸萎縮。いびつな形で大きくなる。皮膚の状態が悪くなる。乳腺がはる。紡錘形の細胞。estrogen上昇しないタイプもある。雌の顆粒膜細胞腫。


ライデッシュ細胞腫

間細胞腫 精巣は大きくならない。間質細胞の腫瘍化。アンドロジェン分泌はなし。やや低下。                                                       


潜在精巣時のホルモン療法  

Gn-RH コンセラール 200μg/h、im  hCG 500-1000IU/h 1週間に3回 1 c


犬猫の帝王切開  平成11年6月10日 

 ビーグル犬 10kgで6-7匹 お産 6時間もかかる。へたすれば半日、1日 陣痛、上の方から、子供下の方からでる 3 辺縁の溢血腔 テルベルジンという緑の色素はがれる。このときは胎盤がはがれているので、帝王切開が必要。陣痛なくても開く。胎盤ついていれば、外陰部から手がでていても、生きている。猫はグリーンのおりものはない。

ブルセラ 帝王切開 胎児死んでいる。

10kgの犬では、指をいれると、体位がわかる。 異常の体位のときはでない。

犬の帝王切開 胎盤剥離、体位陣痛 胎児が膣とどのくらい刺激してるかで分泌が決まる。 直接膣を刺激しても良い 。

オキシトシン量は少なく、ビーグルでも個体差ある。10分で反応、量に関係なし。 胎児がいないときはオキシトシンは反応しない。胎児がいるときのみ。胎児がいないのに 陣痛があるときは、子宮脱の可能性あり、臨床的には希。


破水

胎児と産道の物理的問題で起こる。一次破水、脈絡膜、尿膜、二次破水、羊膜。 犬では、一次破水で50%、二次破水で40%、破水なし10%。 胎水の量は猫は少ない。

排卵数、短頭猫少ない。1-2。少ないとやや大きめ。子供多いと小さいとは言えない。


初産

 大小ばらつきあり。 2産目からはなし。


猫は交尾後、排卵26時間。左右から卵子。6日目まで子宮内に入る。桑実胚。反発しあい、所定の位 置を獲得する。卵子からみると子宮は一本の管。12-13日で着床。15日で7.5Mのエコー当てると、着床部位がみえる。妊娠期間 環境が良いと67日、。環境良くないと 62日。 90gで生まれる。80-60gとくに60gでは育たない。 胎児死亡しても、胎盤形態をとどめる。巨細胞の犬はこの作用はない。脱落膜細胞の人、ネズミ

犬 排卵数 胎児90% 中心着床

猫 排卵数 胎児80%

 猫は妊娠中に交尾することあり。発情兆候あり。


 9日で子宮内に入る。遅い。21日で着床。23-27日エコーで見える。出産時に 体温低下。37.5度 12時間後に出産。陰部、白い粘液がでる。食欲低下。 猫は体温低下は全体の2割。 兎の体温低下が著名。黄体ホルモンうつと体温低下。PGが出産時上昇するので、内分泌的なことが関係しているものとおもはれる。セットポジションをおとしているメカニズムは不明。 犬は出産後、体膜が切れるようになるので、一週間はおりものあり。猫はこの膜がないので出産後も出血はない。翌日はなんにもない様子。 年をとると犬の卵巣は黄体、卵巣両方ある。 へそにペアンをかけて行う。 35日日から犬はものすごす成長。


    
犬猫の薬物による発情抑制  平成11年8月3日 
  抗生腺刺激ホルモン 黄体ホルモン 抗卵砲ホルモン 抗男性ホルモン
MA ++ ++ + -
CAM + ++ + ++
PRG ++ + + -

                                                   抗生腺刺激ホルモンの強いものが良いホルモン剤。


PRG

 発情予想される3ヶ月前に投与する。次の発情までに、2回のPRG の投与が必要。 これができないと発情することがある。(20mg/kgの場合) 犬のようにある程度発情が予想される動物では、発情前の投与はすすめられない。 しかし来月発情が予想される場合や、幼年期の場合は30mg/kgの投与により、発情を予防できる。コビナンの能書には、一回発情が終わってから、使用のこととの記載があるが、これはを実験をおこなっていないからそうかいたらしい。少々量 を多くしても、問題はない。半永久的に使用しても、副作用は少ない。トイ種は増量 したほうが良いとの話もある。着床している犬猫にどうしても投与してしまう可能性がある。その場合正常な出産はできると言う報告もあるが、よくわかっていない。妊娠期間を過ぎても出産していないときは帝王切開が必要である。使用方は3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月に一度投与とあるが、次の発情までに2回の投与が重要。6ヶ月位 はもつらしい。


CMA

 猫に20mg/hで投与すると、たまに効かないケースある。筒井先生は39例中2例効果 のない例あり。30mg/hぐらいのほうがよい。犬猫ともに、子宮は腺の過形性がおき、正常よりだいぶ太くなる。猫は着床まで13日。エコーでみても15日以後ではないと診断は不可能。妊娠している猫にどうしても、いれてしまう可能性がある。その場合正常な出産はできない。母胎も大変なことになるので、かならずCMAをとること、CMAは出産の前でもとれば大丈夫。血中のプロジェステロン濃度を測ると0.48ng/mlが発情していない猫の濃度。12.37、10.73の猫は、妊娠に移行した。1,13の猫はおさえられた。このようにプロジェステロン濃度を測ると有効だが、一般的ではない。発情抑制には、0.7ng/mlの血中濃度が必要。犬猫は一年以上いれておくと、子宮蓄膿症になる確率が高い。永久的にはすすめられない。CMAをとること過形性はすぐにおさまる。発情の回帰は、1-8ヶ月とばらつきが多い。犬ではCMAの一回の投与では、CMAをとること妊娠、出産は可能。 犬は10mg/kgの投与でクロルマジノンは一年後まだ半分位残っている。2-4年は発情しないことが予想される。猫は20mg/hの投与でクロルマジノンは一年後殆ど残っていない。トイ種も大丈夫。雄においては副作用なく良い薬。犬前立腺の治療では去勢より早く萎縮する。2年後位 にはオサケロンという犬専門の前立腺治療薬がでる。


MA

 グレイハウンドなどレースが近い時に使用する。


質問

去勢避妊の場合の副作用

7週令ー7ヶ月避妊、去勢 橈骨は無処置に比べて9-13%長くなる。 尿道の太さはかわらない。

去勢後の勃起。7w去勢0/7、7ヶ月去勢3/5、無処置6/6

避妊後の肥満  避妊後は運動不足 避妊していない時は代謝の亢進

初回発情について 初回発情で交配されると受胎率の低下がある。(85%)ノーマル95%。 子供は大小のばらつきが激しい。


                                        
犬の人工流産と人工授精 平成11年10月13日 

人工流産 エストラジオール 概論  

 日本性は安息香酸をつけて分子量を増やしたもの。アメリカ性は最後にベンゾネートをつけたものが販売されている天然もの。 この薬は日本薬局方。試薬とおなじ。実験はいらない。メーカーの書いている投与量 はいい加減。 投与量 筒井先生の実験ではエストラジオール1回のみの投与とした。2回以上投与では骨髄抑制がおきやすい。しかし投与量 は不明だが1回のみで骨髄抑制がおきたケースもある。 生体でのE2の濃度は50pg/mlで、注射薬の投与では0.05mg/kgの量 に相当する。 犬は受精して、子宮内に進入するまで9日かかる。交尾可能な時期は雌犬は10日位 といはれている。交尾適期の後半は妊娠する確立がきわめて低い。また臨床ではいつの時期の交尾がおこなはれたのかわからない為、交尾のして1週間後にエストラジオールを投与した。その結果 は

0.025mg/kg

30%

0.05mg/kg 50%
0.1mg/kg 90%
0.2mg/kg 100%

であった。5例位 のNの数だが、この実験では骨髄抑制はなかった。犬は子宮内に進入するまで9日かかるため、エストラジオールの投与により、卵管に浮腫をおこさせ、卵子の変性をおこされているといわれる。黄体ホルモンの拮抗作用との文献もあるがもっと高濃度のエストラジオールが必要。エストラジオールの作用時間は約12時間である。


フエーンプロスタレン(シクロセプト・大日本)  

 エストラジオールの時期を過ぎた場合は、12時間位 効果のあるPGF2αフエーンプロスタレンが使用可能。妊娠25日で50μg /kgで流産が可能。50日には25μg /kgで流産が可能。妊娠後、日増しに投与量 を減らせる。時間は長いが副作用はすくない。


合成ドーパミン  

 海外ではプロラクチンの抑制物質。擬妊娠の治療薬として、使用されている。 日本では人体薬である。また豚用がある。流産にも使用されているがPGF2α同様。嘔吐、下痢が激しい以外は、よくわかっていない。


人工授精  

 犬は勃起が自分の意識よりは遅れる。陰茎骨が あるため挿入が可能。交尾のときは完全に勃起していない。挿入してから海綿体がふくれる。 精子には1液、2液、3液がある。 ビーグル位で1液1cc、2液10cc、3液1cc位でる 2液が精子の成分3-4億平均である。 膣から入れるときは2億の精子が必要。子宮に入れるときは2千の精子が必要。精子数すくなくても妊娠可能。 LHサージ後に排卵が来る。そしてプロジェステロンが上昇する。交配してもうまく子供ができない時は最初に交配適期を確認する。そしてプロジャステロン2ng/mlのところが排卵時期になる。アメリカには簡易キュトがある。日本ではプロジェステロンで2-3日、またLHは測定にヨード剤を使用するので時間がかかる。またLHサージは半日しか起きず検査してもエラーがでらすい。 出血の8、10、12日のpの値を計る。2ng/mlあれば交配。ないときは14、16日pの値を計る。 精子は保冷パックに入れれば、妊娠48時間は可能。 凍結精液は膣内は妊娠しない、子宮膨大部にいれる。


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